γCaMKII Shuttles Ca2+/CaM to the Nucleus to Trigger CREB Phosphorylation and Gene Expression

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25303525

  • Intro
    • 神経細胞が活動依存的に遺伝子発現を変化させるためには、ET coupling(細胞膜での興奮を核内の転写につなげる)が必要である。ET couplingはCaV1(L-type)の活性化から始まり、CREBのリン酸化で終わる。α/βCaMKIIはCaV1のそばに集結することでET couplingに参加するが、α/βCaMKIIは核移行しないため、膜と核のギャップをつなぐ機能分子とはなり得ない。
  • Abstract
    • ET couplingを行っている実態はγCaMKIIであり、γCaMKIIはCaNにより脱リン酸化されることでCaMとともに核移行し、CaMが核内転写を引きおこしている。
  • Results
    • 神経細胞を40mM KClで脱分極させるとγCaMKIIが核移行する。CaV1の阻害剤を用いるとこれは起こらないことから、この核移行はCaV1依存的であるといえる。γCaMKIIをGFPで標識して経時変化を追うと5時間にわたって核に集積した。
    • RNAiでγCaMKIIをKDするとpCREBは低下した。Rescue体によってこのリン酸化は回復した。c-fosの発現についても同様の現象が観察された。
    • γCaMKIIとCaMは共在し、γCaMKIIのKDによってCaMの核移行が阻害される。リン酸化抵抗性のγCaMKIIではCaMを核移行させない。γCaMKIIは自己リン酸によってCaMをトラップし、ともに核移行していると考えられる。
    • CycloporinやFK506によってCaNを阻害すると、γCaMKIIの核移行もCaMの核移行もCREBリン酸化も阻害された。
    • Ser334残基は恒常的にリン酸化されている。CaNと反応させると脱リン酸化される。リン酸化サイトをつぶしたS334Eでは(常にリン酸化されている状態をmimicしているので)刺激しても核移行しなかった。
    • βCaMKIIは刺激後に細胞膜直下に点状集積し、CaV1と共在する。βCaMKIIをKDするとγCaMKIIは核移行するがCaMが核移行しない。試験管内ではβCaMKIIがγCaMKIIをリン酸化する。
    • CREBのリン酸化はCaMKIVによって行われている。CaN阻害でγCaMKIIが核移行しなかったり、β/γCaMIIをKDしたりすると、CaMKIVの活性化は起こらない。
    • γCaMKIIの酵素活性部位を潰しても CREBはリン酸化されたが、CaM結合部位を潰すとリン酸化されなかったことから、γCaMKIIの酵素活性ではなくCaM結合能がCREBリン酸化に必要であった。
    • Neurograninは天然のタンパク質で、CaMと結合し、CaMがCaと結合するとCaMを手放す性質がある。このNeurograninに核移行シグナルをつけたところ、そのままではCREBはリン酸化されない。しかし脱分極させるとCREBリン酸化は起こり、γCaMKIIをKDしてもこれは起こる。STO-609でCaMKKを阻害するとこのリン酸化は阻害される。CaMさえ核移行すればCaMKK依存的なCREBのリン酸化がおこなわれ、γCaMKIIそのものの酵素活性は必要ない。
  • Discussion
    • CaMはもともとある程度核内に存在するため、CaMの核移行の効果は薄いのではないか?Ca結合の活性型CaMは核内にないため、Ca/CaMが十分な刺激伝達能をもつのではないかとしている。
    • βCaMKIIとCaNのような対極の活性を持つ酵素が共同してCREBリン酸化に関与しているのは長らく謎だった。γCaMKIIに対する、βCaMKIIからのリン酸化とCaNからの脱リン酸化が、それぞれCaMの結合と核移行に関与している。
    • Caはどのようなkineticsで核内に流入するのか。もしくはCaは直接核内に流入せず、CaMKIVの活性はすべてCa/CaMの核移行に依存するのか。だとすればγCaMKIIによる遅い輸送では、前初期遺伝子などの速い発現に説明がつかない。別のCaM輸送機構の存在が必要orそもそもCa/CaMの存在はCaMKIVの活性に不可欠ではない。
    • CaMKIVの活性化にはCa/CaMの結合とCaMKKによるリン酸化の2つが必要であるはずだが、当論文ではCaMKIVのリン酸化について述べていない。CaMKKが核移行することを示すか、別の機構でsynapse-nucleusをつなぐ説明をしなければならない。
    • γCaMKIIは5時間かけて核に集積する。あまりに遅いので、素早いシグナル伝達やCREBのリン酸化、素早い学習の成立にはγCaMKIIは関与していないと考えられる。
    • この遅い集積は直近5時間の神経活動のintegralをとって、それを核内CaM濃度に反映させているのかもしれない。ここに素早いシグナル伝達がCaMKK系から入る事で、[Signal(CaMKK)]×[Signal(rCaMKII,Ca/CaM)]のようにそれぞれの情報量の積をとって遺伝子発現量に反映させているのかもしれない。