ユーザーイリュージョン 第5章

ヴィクトル・ユゴーは「レ・ミゼラブル」の売れ行きが気になって出版者に手紙を書いた ー 「?」
出版者も負けてはいない。真実を曲げる事なく伝える返事を出した ー 「!」

ビット数で測ればこのやりとりの情報量は合計10ビットほどである。それでも十分に意思は伝わった。決め手となったのは伝達されたビット数ではない。情報を送った時のコンテクストだ。二人にとって、この本が当たるかどうかは、刊行直後のこの時期、最大の関心ごとだった。二人の頭はそのことでいっぱいだった。
ユゴーが書いた疑問符は、明白な形で情報を処分した結果だ。この処分された情報を「外情報」と呼ぶ。また、外情報を処分する過程を「計算」と呼ぶ。