Deformation of attractor landscape via cholinergic presynaptic modulations: A computational study using a phase neuron model

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23326520
“記憶の想起”には意識的な想起だけでなく、意識せずに自律的にイメージが展開する有名なマルセル・プルーストの回想などが知られている。その中でも意識的な記憶の想起にどのような脳内機序が働いているのかはよくわかっていない。「思い出そう」という能動的な心の働き(意識)が、脳内のニューラルネットワークにどのような働き(作用)をしているのか調べた。本研究では神経細胞を位相素子モデルによりモデル化し、それを多数結合した位相素子から成るニューラルネットワーク*1を構築した。このモデルには、脳が何かに注意を向ける時に放出されるアセチルコリンによる効果と、より高次の領域からそのネットワークへ入力されるトップダウン信号の効果を取り込んだ。アセチルコリン量が通常レベルの時、ネットワークの状態は、潜在的な活性パターンとして、意識にはのぼらず複数の記憶状態(擬アトラクタ)の間を次々と自発的に遷移し続ける状態にある。脳内では、注意に伴って前脳基底部マイネルト核から大脳皮質へのアセチルコリン量が一時的に増大すると、ネットワークはこれまでの記憶の中のどれかを思い出す状態(アトラクタ状態)に変化する。その際に脳の高次領域からのトップダウン信号が同時に加わることにより、脳はある特定の記憶を「意識的に」思い出すことができる。
なぜAChなのか。記憶の安定度のパラメータは何か。トップダウンシグナルはどのように定義されるか。ゆらぎ・ノイズのようなものはあるのか。

*1:神経細胞は一般に多数の変数を用いてモデル化されるが、それを1変数のみを用いてシンプルにモデル化したものが位相素子である。それを多数結合させて脳のモデルとしてのニューラルネットワークを構築したものが位相素子から成るニューラルネットワークである