Lynx1, a cholinergic brake, limits plasticity in adult visual cortex.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21071629
http://molecular-ethology.biochem.s.u-tokyo.ac.jp/neuro-seminar/ftp-box/1238.full.pdf


成体において可塑性を阻害する要因を探すために、トランスクリプトーム解析を行った。候補分子の一つであるLynx1は内因性のプロトキシンでnAchRの阻害薬と類似した構造をもち、nAchRに結合する。Lynx1は臨界期終了ののちに発現上昇を認めた。ここでLynx1ノックアウトマウスを作成し電気生理学的解析を行った。片眼遮蔽実験を行ったところノックアウトでは成体になっても可塑性が認められた。ノックアウトにニコチンを投与した状態で片眼遮蔽を行ったところ可塑性が阻害された。このことから成体の可塑性がnAchシグナルを介していることが分かった。通常片眼遮蔽を行ったマウスでは視力の回復は望めないが、ノックアウトでは遮蔽した目を開く事で視力が回復した。またコントロールにおいてもnAch阻害剤を投与することで弱視の回復が見られた。
成体において可塑性を制限するものにPNNやミエリンがあるが、Lynx1ノックアウトではこれらに変化は見られなかった。nAchRはV1に入力する視床-視覚皮質神経軸索のシナプス前終末に発現する事で、V1における興奮性を促進する事が知られている。また、特定の抑制性ニューロンに発現するnAchRの活性化は興奮と抑制のバランスを変化させ脱抑制を引き起こす。実際Lynx1とニコチン性アセチルコリン受容体のmRNAは外側膝状体のみならず一部の抑制性ニューロン(特にPV+)で共発現していた。1次視覚野に局所的にBzを注入し抑制を増強したところ可塑性を阻害することが明らかになった.このことからLynx1はコリン作動性シグナルを介して興奮と抑制のバランスを制御することで可塑性を抑えていることが示唆された。