ユーザーイリュージョン 第10章

死に至る病」の中で、キルケゴールは絶望感に触れ、絶望感には三つのレベルがあり、すべて自己の状況にかかわっている、と書いている。ここで言う自己とは、精神あるいは意識であり、自分自身が自分自身と関係する事だ。自分自身と関係する事で陥る絶望には三通りある。「自己を持っていることを自覚していない絶望、自分自身である事を欲しない絶望、自分自身であろうと欲する絶望」だ。

第一の絶望は、<私>と<自分>のあいだに一切関係がないという事実を語っている。<私>は根なし草なのだ。第二の絶望は、<私>と対になっている<自分>を受け入れない<私>にまつわるものだ。「私は<自分>になりたくない」<私>は関係を渋るが、いつも失敗するので絶望する。キルケゴールの言う第三の絶望は、<自分>でありたいと素直な気持ちで願っているにもかかわらず、思い切って<私>自身を捨てて<自分>を受け入れる事の出来ない<私>の絶望に相当する。「私はなんとしても<自分>でありたいと思っている。だが、ふんぎりがつかない。」